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2022.09【特集記事】

2022年度新しい技術士第二次試験口頭試験合格のポイント

技術士試験対策講座 代表幹事 田淵一光    
 

(1) 試問事項

2019年度以降より口頭試験は、コンピテンシーの確認にウエイトがシフトされました。

口頭試験の内容(総合技術監理部門は変更なし)
表1

表2

アンケート調査では延長事例は、10%程度以下です。しかも、数分の延長です。5分を超える延長はありませんでした。ほとんどの試験官が、時間を厳守しています。

●新制度の特徴

コンピテンシー審査になり、試問内容が大きく変わりました。従来は、経歴欄で「技術士にふさわしい業務」を確認する。業務内容の詳細欄で「高等の応用能力(創意工夫による課題対策)」確認する。この2つを審査してきました。しかも、口頭試験不合格者の大半は、業務内容の詳細で応用能力が確認できないケースでした。

新制度では、次の4つのコンピテンシーについて直接試問しています。従来の審査方法が一新されました。

① コミュニケーション、リーダーシップ
② 評価、マネジメント
③ 技術者倫理:
④ 継続研さん

(2) 新制度の口頭試験の実際

a. 口頭試験の流れ

コンピテンシー審査に変わりました。全部門、全科目でコンピテンシー審査が周知徹底されています。上記の①〜④の試問事項にそって、順に試問しています。
令和元年では、「業務経歴証明書」の内容を事前に読んで、4つのケースがあります。

表3


(3) 4つの試問事項の具体的な質問内容

全部門・科目で、4つの試問事項について、同じような質問をしています。おそらく、試問事項の目的と標準書が試験官に配布されているのではないか、と想定します。
令和元年度の114名の口頭試験事例から、4つの代表的な質問内容を列記したものを「6章の申込書の書き方」(講座使用テキスト内)に示しました。


(4) 新制度の口頭試験の所見

a. コンピテンシー審査を意識して実務経験証明書を書く

①コミュニケーション、リーダーシップと②評価、マネジメントは、コンピテンシーの視点から試問する。
このため、申込書の「実務経験証明書」の記載に当たって、具体的な試問内容を頭にいれて記述すると良いでしょう。できれば、試問内容が「業務内容の詳細」から読みとれると完璧です。
旧制度では、創意工夫の内容を意識して「業務内容の詳細」を述べていました。新制度では、与えられた課題に対し、下記を意識して、4つのプロセス管理のような感覚で述べてください。
円滑な口頭試験の流れとなることを約束します。

  • 課題解決に当たり、どのような目的で、だれと意思の疎通を図ったか(コミュニケーション)
  • 誰とどのような利害関係の調整を図ったか(リーダシップ)
  • 創意工夫によるコストの低減、工期の短縮、品質保証などを明確に示す(マネジメント)
  • 得られた成果に関し、次工程や別の業務に資することを明言する(評価)

b. 技術者倫理、継続研鑽は従来どおりの試問からコンピテンシーに変わる

③技術者倫理、④継続研さんは、旧制度と試問内容は変わりません。
令和元年度は、旧制度のような「技術士倫理綱領」に関する試問が主体です。しかし、コンピテンシー審査に慣れてくると、「関連法規の遵守」、「自らの業務及び責任範囲」、「地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保」に関連する質問が増えると想定します。

  • 技術者倫理の中の、「業務履行上の関係法令の遵守」に関連する質問
    (業務に関連する関係法規の遵守もチェックして、口頭試験に臨んでください。)
  • 自身の業務について、責任範囲が明確に説明できるようにしましょう。
  • 自身の業務について、「次世代に渡る社会の持続性の確保」が具体的に説明できるようにしましょう。

(5) 総合技術監理は変更なし

総合技術監理は従来どおり、①体系的専門知識と②経歴及び応用能力の審査が行われます。

★従来の口頭試験とは、全く異なる内容です

技術部門総合技術監理部門それぞれの口頭試験チェックシートの例を示します。従来とは全く異なる試験であることがよくわかると思います。

このため、筆記試験合格時は、「技術士第二次試験口頭試験完全合格対策講座」をご受講され、合格を確実にしてください。

技術部門の口頭試験チェックシート
表4

総合技術監理部門の口頭試験チェックシート
表5

口頭試験で頭に入れておくコミュニケーション能力の解説

  • 業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
  1. 新たに発生するリスクの課題、解決策に対する評価を、明確かつ効果的な意思疎通の際のリスクコミュニケーションの留意点がです。
  2. コミュニケーション能力の重要点は、必要な説明を聞き十分に納得した上で、自分で判断する説明責任を受け入れることです。
  3. 技術者が重視すべきコミュニケーション能力は段階責任です。
●コミュニケーション能力とは
  • 技術士業務の履行に当たり、共に働く者、雇用者、依頼者又は公衆との間で明確かつ効果的な意思疎通(コミュニケーション)を行う能力が求められます。
  • コミュニケーションの主な内容は下記のとおりです。
    1. 論文報告書設計書等文章作成説明又は発表
    2. 業務に関する報告又は指示口頭又は文書による授受
    3. 情報意見交換討議
  • 海外関係の業務に携わるためには、一定水準の語学(多くの場合英語)力必要です。
a.コミュニケーションの留意点はインフォームドコンセント
  • 病院などの医療機関で、手術や特殊な検査・治療を受ける際、医師から詳しい病状、治療方法の選択肢とリスクの説明を受け、内容を理解・同意した上で、医療行為を受けた経験があると思います。これをインフォームドコンセント(Informed Consent)、十分な情報を得た上での合意と言います。合意するか否かは、もちろん本人の自由です。重要なのは、必要な説明を聞き十分に納得した上で、自分で判断する説明責任を受け入れることです。
  1. 説明の内容としては、対象となる行為の名称・内容・期待されている結果のみではなく、代替治療、副作用や成功率、費用、予後までも含んだ正確な情報が与えることが望まれます。
  2. また、患者・被験者側も納得するまで質問や説明も求めます。これは医療倫理から派生した概念であり、患者の権利の一つともされています。
b.コミュニケーションは知る権利に対する説明責任
  • 技術者のコミュニケーションインフォームドコンセントが必要です。製品・サービスの提供を受ける消費者は、知る権利に対する意識を高めつつあります。しかし多くの場合、消費者は技術者が開発した製品の安全性を特に疑うことなく購入し、使用しています。これらの製品に欠陥があり、自分に損害をもたらす可能性があっても、消費者にはそれを予見する知識、また防ぐ知識や技能もありません。
  1. 消費者は技術者に、製品の安全の全てを委ねています。従って技術者には、自分たちが提供する製品によって事故が起きないように設計・製造する専門責任生みの親としての責任:本質安全)あります。
  2. 技術者は製造工程において作業者社会環境に悪影響を与える有害物質を輩出していないかという製造工程管理責任環境倫理学)、事故などがあった時に、製造工程や事故の過程を正しく社会に説明する責任もあります。
  • 消費者の誤った使い方によって事故が起こる可能性があるならば、企業は事前に消費者にきちんと説明原理を分かりやすく説明する責任)しなければなりません。
  1. 以前は電化製品が故障して修理を依頼すると、しばらくして「基板が破損していたので、取り替えておきました」と、説明がなく、後から一方的に報告され、修理代を請求される流れが一般的でした。これがパターナリズムで、「消費者の知る権利」は無視されていました。
  2. インフォームドコンセントでは、修理に出すと、「故障原因は、○○が破損している可能性があります。破損部分だけを修理する、○○部分ごと取り替える、新しい製品に買い替える、3つの方法があります。それぞれいくらかかります。どうしますか?」といった説明の連絡が来ます。これがインフォームドコンセントの「知る権利と説明責任」です。
  3. 技術者のコミュニケーションとは、「知る権利に対する説明責任」では、充分にお客様に対し情報と選択肢を示し、最終的には消費者側が判断できるという技術者のインフォームドコンセントの権利と責務が原則となっています。
  4. 現在の技術者に求められるコミュニケーション能力では、消費者は製品・サービスの特徴や安全性、故障原因、対策方法などを「知る権利」を有しているとしています。これに呼応して、技術者は消費者の「知る権利」に対して、充分納得してもらえるまで「説明する責任」を負っていることになります。
  5. この消費者の「知る権利」と、技術者の「説明する責任」が互いに補完することによって、社会や人々の安全・安心が築かれているのが、技術者のコミュニケーション能力です。「人々(消費者)を守る義務の必要性」を言います。
◎リスクコミュニケーションは5段階で進める
  • リスクコミュニケーションを進めるには、次の5段階で実施します。
  1. 企業・技術者は、リスクについての利害関係者(ステークホルダー)に情報を伝える
  2. 企業・技術者、利害関係者(ステークホルダー)は、互いに意見の交換をする
  3. 企業・技術者、利害関係者(ステークホルダー)は、リスクについて相互の理解を深める
  4. 企業・技術者、利害関係者(ステークホルダー)の間で責任を共有する
  5. 企業・技術者、利害関係者(ステークホルダー)の間で信頼を構築する


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