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2019.11【特集記事】 今がチャンス!技術士試験
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1−1.技術士制度のあらまし技術士は、およそ半世紀前に、米国のコンサルティングエンジニアおよびプロフェッショナルエンジニアの制度を倣って、コンサルティングエンジニアの制度を定着させるために生まれたものです。当初民間資格としてスタートし、技術士法の制定をめざした積極的な活動が行われ、紆余曲折を経て1957年、国会の審議を通過し、科学技術庁を所管とする技術士制度が発足したわけです。 ![]() 1983年には技術士補制度が発足し、技術士となるのに必要な技能を修習するため、技術士補として技術士業務を補助することになりました。 1998年に、APECエンジニアの枠組み作りがスタートし、2000年にAPECエンジニア登録が開始されました。この動きに伴い、2000年4月、技術士法が改正され、技術士第二次試験は技術士第一次試験の合格者(及びそれと同等と認められる者)のみが受験できるようになりました。技術士第一次試験は技術士第二次試験のパスポートというわけです。そして、2007年、2013年と試験内容の改正が行われ、さらに2019年度から、また新たに技術士第二次試験の内容が変わりました(技術士第一次試験の内容は、専門科目の共通化―5つ程度の系に大くくりする―が検討されておりますが、いまのところ改正の時期等は公表されておりません)。 1−2.技術士第二次試験の改正ポイント試験実施機関である日本技術士会のホームページの「平成31年度 技術士試験の試験方法の改正について」から、「第二次試験;試験方法の新旧対照表」を記載します(総合技術監理部門の筆記試験・口頭試験については、試験方法の変更はありません)。ほかにも、同ページには「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」、「第二次試験;選択科目の新旧対照表」などが掲載されておりますので、技術士受験予定者は必ずご確認ください。 なお、試験改正のポイントとして、大きな変更点は以下の3点です。
1)技術士第二次試験の実施について (1)技術士第二次試験は、機械部門から総合技術監理部門まで21の技術部門ごとに実施し、当該技術部門の技術士となるのに必要な専門的学識及び高等の専門的応用能力を有するか否かを判定し得るよう実施する。 (2)試験は、必須科目及び選択科目の2科目について行う。 出題に当たって、総合技術監理部門を除く技術部門における必須科目については当該技術部門の技術士として必要な当該「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するものについて、選択科目については当該「選択科目」についての専門知識及び応用能力に関するもの、並びに問題解決能力及び課題遂行能力に関するものについて問うよう配慮する。 総合技術監理部門における必須科目については、「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力を問うこととし、選択科目については、総合技術監理部門を除く技術部門の必須科目及び選択科目と同様の問題の種類を問うこととする。 試験の程度は、科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計等の業務に従事した期間が4年等であることを踏まえたものとする。 (3)筆記試験(必須科目、選択科目)及び口頭試験を通して、問題作成、採点、合否判定等に関する基本的な方針や考え方を統一するよう配慮する。 2)技術士第二次試験の試験方法 (1)筆記試験
![]() <口頭試験(総合技術監理部門を除く技術部門)> ![]() 1−3.過去3年間の第二次試験結果と2020年度試験への対応過去3年間の合格率を下表に示します。全体の合格率が13〜15%と、大変厳しい合格率であることを認識ください。また、年ごとに合格率が下がっていることにも着目してください。特に平成30年度は10%を切り、9.1%という技術士試験が始まって以来の最低の合格率でした。技術士試験は、大変難関な試験ではありますが、試験改正の経緯には「技術士制度の活用の促進、技術士資格の国際通用性の確保」等を目的としているように、技術士の資格者数を多くしたいという意向があります。 いままで、明らかにされなかった試験の評価項目が、2019年度の改正で初めて公表されたことは、その表れでしょう。 改正初年度の2019年度試験結果は、本誌編集時点(2019年10月上旬)ではまだわかりませんが、おそらくは今までの厳しい合格率に対して配慮し、比較的高めの筆記試験合格率になるのではないかと予想されます。しかし、仮にそうであったとしても、同じく2019年度より改正された口頭試験で厳しく審査され、結果として例年どおりの厳しい合格率のままになるかもしれません。 それでも、2019年度の試験実施により、今まで推測の域を出なかった新試験の内容がはっきりしましたので、2020年度の技術士試験は、比較的対処しやすくなったといえましょう。 以下に、新技術士試験における留意すべきポイントをお伝えします。 【選択科目の統合等について】 選択科目の統合された部門はもちろん、統合が行われていない部門でも、選択科目名の変更や、「選択科目の内容」が見直された。 この統合等により、試験問題の内容も統合等の変更が行われている。 選択科目の統合のされ方や「選択科目の内容」がどのように変更されたか、さらに2019年度の試験内容をよく確認し、受験上、有利と思われる受験部門・選択科目や「専門とする事項」の選定を十分検討すること。 【I:必須科目について】 受験部門全体の共通問題である必須科目の記述式問題は、今回の改正で最も大きな点といえる。2019年度試験では、総合技術監理部門を除く20部門すべてにおいて、同様の形式で出題された。2020年度も同様の形式で出題されるかどうかはわからないが、まずは2019年度の出題形式に沿って、出題が予想されるテーマに基づき答案を準備しておく。 出題予想するうえで、過去の筆記試験において必須科目の記述式問題が平成24年度(2012年度)以前にも出題されているので、まずこれらを確認して出題テーマのイメージをつかむ。 さらに、最近の社会経済・技術動向に留意し、どのような問題が出題されるのかを予測し、重要テーマやキーワードを抽出し、まとめておく。 また、「技術者倫理」については、2020年度以降の試験でも必須科目の問題中で問われるであろう。「技術士倫理綱領」やSDGs(持続可能な開発目標)などの内容をよく理解し、自分自身の意見として整理しておく。 【II:選択科目-「専門知識及び応用能力」について】 この科目は、「II−1」(「専門知識」に関する、答案用紙1枚解答の問題)と「II−2」(「応用能力」に関する、答案用紙2枚解答の問題)の2種類の問題が出題される。 II−1については、従来までの試験と同様、専門知識に関する問題が出題されている。 II−2の出題は、20部門の各科目とも、ほぼ同じ出題形式で出題された。すなわち、あるプロジェクトを進めるにあたっての調査・検討事項や業務遂行手順とその留意点、関係者との調整方策などである。II−2の対策としては、出題予想されるケーススタディをいくつか想定し、2019年度試験の形式にそってまとめておくのが基本であろう。 【III:選択科目-「問題解決能力及び課題遂行能力」について】 改正前の「課題解決能力」の問題が、「問題解決能力及び課題遂行能力」という表現になって変更された。 この科目についても、20部門の各科目とも、ほぼ同じ出題形式で出題された。 したがって対策としては、2019年度出題を含めた過去問題の出題傾向や、最近の社会経済・技術動向から出題テーマを予想し、2019年度の出題形式に沿って、答案例を準備しておく。 また、上記のように、2019年度出題では、I、II−2、IIIの各科目とも、総合技術監理部門を除く20部門とその選択科目で、同様の形式・問いかけで出題された。しかし、2019年度と同じパターンが2020年度も継続されるとは限らないので、異なった形式で出題されても対応できるよう、どの科目についても設問内容をアレンジして問題を作り変え、その答案を作成してみるなど、応用能力を身に着けておく。 【「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」について】 2019年度より、筆記試験の各科目の評価項目として、「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」の各項目が位置づけられた。 筆記試験の各科目の答案を作成する際には、それぞれの科目に該当するコンピテンシーの内容が評価されることに十分留意することが重要となる。 各科目の試験問題で、該当するコンピテンシーを示すキーワードがそのまま問題文の中で記されていたりする(例:IやIIIでの「評価」→「新たなリスク」として問われている)が、たとえば「コミュニケーション」(的確表現がされているか)、「専門的学識」(基本的知識を持っているか)などがチェックされているということも意識して答案作成を行う。 【口頭試験について】 筆記試験と同様、総合技術監理部門を除く20部門は、2019年度より口頭試験も改正される。本誌編集時点では2019年度口頭試験の実施前のため、その試験内容はわからないが、基本的な対策としては、従来までの口頭試験内容をよく把握し、試問されている内容に対し準備しておくほか、試験改正事項をよく理解し、新たに問われると思われる試問内容を推測・準備する。特に、「技術士としての実務能力」における「コミュニケーション・リーダーシップ」、「評価、マネジメント」については、受験申込書の「実務経験証明書」(業務経歴)の内容に基づき、十分準備しておく。また、筆記試験でのIIIの答案内容も試問の対象にされるので、復元答案に基づき内容をチェックしておくほか、念のためIやIIの答案も、内容を確認しておく。 新試験の内容が明らかになったといっても、技術士試験のレベルが下がるわけではありません。技術士は、「科学技術に関する高等の専門的応用能力」を有した者に与えられる資格です。 新試験の内容とその要求しているものをよく理解し、その出題範囲・出題内容を予想することが大切です。そして、予想した出題範囲・出題内容に対し、自分が合格ラインをクリアするにはどのような勉強が必要かをよく認識して、ブレのない学習を継続して行い、自身の実力を着実にアップしていくのが、対策の基本です。 また、単に受験勉強という狭い枠だけにとらわれず、普段の業務を行っているときや、毎日のニュースを聞いたりしているときに「自分が技術士であるならどう対応するだろう?」と、一段高い視点から多面的に物事を見ようとすることも、「応用能力」や「問題解決能力・課題遂行能力」を身につけるために、そして「技術士に求められるコンピテンシー」を理解するうえで大事です。 技術士改正の2年目がチャンスです。本誌を参考に、試験攻略のためのポイントやツールを見つけて、2020年度の技術士試験合格を目指してください。
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