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2017.11【特集記事】
チャレンジ! 技術士試験!! 〜試験改正前を狙え!〜
第1章 2018年度技術士試験の内容は? 〜技術士試験概要と試験制度の変更および今後の対応〜
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1−1.技術士制度のあらまし
技術士は、およそ半世紀前に、米国のコンサルティングエンジニアおよびプロフェッショナルエンジニアの制度を倣って、コンサルティングエンジニアの制度を定着させるために生まれたものです。
当初民間資格としてスタートし、技術士法の制定をめざした積極的な活動が行われ、紆余曲折を経て1957年、国会の審議を通過し、科学技術庁を所管とする技術士制度が発足したわけです。
1958年7月、第1回目の技術士試験が行われ、同年11月、技術士法に基づく(社)日本技術士会が発足しました。
1983年には技術士補制度が発足し、技術士となるのに必要な技能を修習するため、技術士補として技術士業務を補助することになりました。
1998年に、APECエンジニアの枠組み作りがスタートし、2000年にAPECエンジニア登録が開始されました。この動きに伴い、2000年4月、技術士法が改正され、技術士第二次試験は技術士第一次試験の合格者(及びそれと同等と認められる者)のみが受験できるようになりました。技術士第一次試験は技術士第二次試験のパスポートというわけです。そして、2007年から第二次試験の試験方法が変わり、さらに2013年度に再度、技術士試験の見直しが行われました。
2018年度試験は、この改正の6年目となります。
そして現在、文部科学省で「今後の技術士制度の在り方について」がとりまとめられ、試験内容の変更が2019年度以降に予定されております。
1−2.技術士第一次試験実施概要
「平成29年度技術士第一次試験実施大綱」(平成28年11月22日発表)では以下のように定められました。
1)技術士第一次試験の実施について
(1) 技術士第一次試験は、機械部門から原子力・放射線部門まで20の技術部門ごとに実施し、技術士となるのに必要な科学技術全般にわたる基礎的学識及び技術士法第四章の規定の遵守に関する適性並びに技術士補となるのに必要な技術部門についての専門的学識を有するか否かを判定し得るよう実施する。
(2) 試験は、基礎科目、適性科目及び専門科目の3科目について行う。
出題に当たって、基礎科目については科学技術全般にわたる基礎知識(設計・計画に関するもの、情報・論理に関するもの、解析に関するもの、材料・化学・バイオに関するもの、環境・エネルギー・技術に関するもの)について、適性科目については技術士法第四章(技術士等の義務)の規定の遵守に関する適性について、専門科目については技術士補として必要な当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識について問うよう配慮する。
基礎科目及び専門科目の試験の程度は、4年制大学の自然科学系学部の専門教育程度とする。
(3) 基礎科目、適性科目及び専門科目を通して、問題作成、採点、合否判定等に関する基本的な方針や考え方を統一するよう配慮する。
なお、専門科目の問題作成に当たっては、教育課程におけるカリキュラムの推移に配慮するものとする。
2)技術士第一次試験の試験方法
(1) 試験の方法
- 試験は筆記により行い、全科目択一式とする。
- 試験の問題の種類及び解答時間は、次の通りとする。((2)の配点含む)
問題の種類 |
解答時間 |
配 点 |
I 基礎科目 科学技術全般にわたる基礎知識を問う問題 |
1時間 |
15点満点 |
II 適性科目 技術士法第四章の規定の遵守に関する適性を問う問題 |
1時間 |
15点満点 |
III 専門科目 当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識を問う問題 |
2時間 |
50点満点 |
- 受験者が解答するに当たっては、電子式卓上計算機(四則演算、平方根、百分率及び数値メモリのみ有するものに限る。)等の使用は認めることができるが、ノート、書籍類等の使用は禁止する。
1−3.技術士第二次試験実施概要
「平成29年度技術士第二次試験実施大綱」(平成28年11月22日発表)では以下のように定められました。
1)技術士第二次試験の実施について
(1) 技術士第二次試験は、機械部門から総合技術監理部門まで21の技術部門ごとに実施し、当該技術部門の技術士となるのに必要な専門的学識及び高等の専門的応用能力を有するか否かを判定し得るよう実施する。
(2) 試験は、必須科目及び選択科目の2科目について行う。
出題に当たって、総合技術監理部門を除く技術部門における必須科目については当該技術部門の技術士として必要な当該「技術部門」全般にわたる専門知識について、選択科目については当該「選択科目」に関する専門知識及び応用能力並びに課題解決能力について問うよう配慮する。
総合技術監理部門における必須科目については、「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力を問うこととし、選択科目については、総合技術監理部門を除く技術部門の必須科目及び選択科目と同様の問題の種類を問うこととする。
試験の程度は、科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計等の業務に従事した期間が4年等であることを踏まえたものとする。
(3) 筆記試験(必須科目、選択科目)及び口頭試験を通して、問題作成、採点、合否判定等に関する基本的な方針や考え方を統一するよう配慮する。
2)技術士第二次試験の試験方法
(1) 筆記試験
- 総合技術監理部門を除く技術部門の必須科目は択一式により、選択科目は記述式により行う。
総合技術監理部門の必須科目及び選択科目は、いずれも択一式及び記述式により行う。
- 筆記試験の問題の種類及び解答時間は、次のとおりとする。((3)の配点含む)
(総合技術監理部門を除く技術部門)
※必須科目(択一式)の成績が合否決定基準に満たない者については、選択科目(記述式)の採点を行わない。
(総合技術監理部門を除く技術部門)
問題の種類 |
解答時間 |
配 点 |
I 必須科目 「技術部門」全体にわたる専門知識 |
1時間30分 |
30点満点 |
II 選択科目 「選択科目」に関する専門知識及び応用能力 |
2時間 |
80点満点 (各40点) |
III 選択科目 「選択科目」に関する課題解決能力 |
2時間 |
(総合技術監理部門)
問題の種類 |
解答時間 |
配 点 |
I 必須科目 「総合技術監理技術部門」に関する 課題解決能力及び応用能力 |
択一式 |
2時間 |
50点満点 |
記述式 |
3時間30分 |
50点満点 |
II 選択科目
(他の20の技術部門の必須科目及び
対応する選択科目のうちあらかじめ
選択する1科目) |
1 選択した「技術部門」全般にわたる専門知識 |
1時間30分 |
30点満点 |
2 選択した技術部門に対応する「選択科目」 に関する専門知識及び応用能力 |
2時間 |
80点満点 (各40点) |
3 選択した技術部門に対応する「選択科目」 に関する課題解決能力 |
2時間 |
※既に総合技術監理部門以外のいずれかの技術部門について技術士となる資格を有する者は、当該技術部門に対応する選択科目が免除される。(技術士法施行規則 第11条の2)
- 受験者が解答するに当たっては、電子式卓上計算機(四則演算、平方根、百分率及び数値メモリのみ有するものに限る。)等の使用は認めることができるが、ノート、書籍類等の使用は禁止する。
(2) 口頭試験
- 口頭試験は、筆記試験の合格者に対してのみ行う。
- 口頭試験は、技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における答案(総合技術監理部門を除く技術部門については、課題解決能力を問うもの)及び業務経歴を踏まえ実施するものとし、筆記試験の繰り返しにならないように留意する。
- 試問事項及び試問時間は、次のとおりとする((3)の配点含む)。なお、試問時間を10分程度延長することを可能とするなど受験者の能力を十分確認できるよう留意する。
(総合技術監理部門を除く技術部門)
試問事項 |
試問時間 |
配 点 |
I 受験者の技術的体験を中心とする経歴の内容及び 応用能力(1.経歴及び応用能力) |
20分 |
60点満点 |
II 技術士としての適格性及び一般的知識 (2.技術者倫理 3.技術士制度の認識その他) |
各20点満点 |
(総合技術監理部門)
試問事項 |
試問時間 |
配 点 |
I (必須科目に対応) |
1 「総合技術管理部門」の必須科目に 関する技術士として必要な専門知識 及び応用能力 |
1.体系的専門知識 |
20分 |
40点満点 |
2.経歴及び応用能力 |
60点満点 |
II (選択科目に対応) |
1 受験者の技術的体験を中心とする経歴の内容及び応用能力 (1.経歴及び応用能力) |
※ 20分 |
60点満点 |
2 技術士としての適格性及び一般的知識 (2.技術者倫理 3.技術者制度の認識その他) |
各20点満点 |
※選択科目に関する口頭試験は、総合技術監理部門以外の技術部門の口頭試験にて別途行うこととする。また、選択科目が免除される者 は必須科目のみの試問とする。
1−4.今後の試験制度の変更と2018年度試験への対応
平成28年12月に、文部科学省科学技術・学術審議会技術士分科会で「今後の技術士制度の在り方について」が取りまとめられました。
上記では、技術士第一次試験・第二次試験の具体的な改善方策がまとめられております。
その方策で、試験内容に関する重要ポイントを以下にお伝えします(「今後の技術士制度の在り方について(概要)」より引用。アンダーライン部も同じ)。
(1) 第一次試験
- 専門科目を共通化し、5つ程度のグループ(系)ごとに行うことが望ましい。
「系」の在り方等については、検討した考え方を踏まえ、想定される受験者層や実際の試験実施方法等を勘案して更に検討を進める。
(2) 第二次試験
- 技術士資格の国際的通用性を確保する観点から、IEAのPCを踏まえて策定された「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」を念頭に置きながら、第二次試験の在り方を見直すことが適当。
- 受験申込み時
以下を記載した「業務経歴票」を提出
従事した業務の内容、業務を進める上での問題や課題、技術的な提案や成果、評価及び今後の展望など
- 筆記試験(総合技術監理部門を除く技術部門)
- 必須科目について、試験の目的を考慮して現行の択一式を変更し、記述式の問題とし、技術部門全般にわたる専門知識、応用能力及び問題解決能力・課題遂行能力を問うものとする。
- 選択科目については、従来通り記述式の出題とし、選択科目に係る専門知識、応用能力及び問題解決能力・課題遂行能力を問うものとする。
ただし、必須科目の見直しに伴い、受講生の負担が過度とならないよう、選択科目の試験方法を一部変更する。
- 口頭試験
- 技術士として倫理的に行動できること。
- 多様な関係者と明確かつ効果的に意思疎通し、多様な利害を調整できること。
- 問題解決能力・課題遂行能力:筆記試験において問うものに加えて、実務の中で複合的な問題についての調査・分析及び解決のための課題を遂行した経験等。
- これまでの技術士となるための初期の能力開発(IPD)に対する取組姿勢や今後の継続研さんに対する基本的な理解。
(3) 技術部門・選択科目
- 選択科目は、細分化することを避け、技術部門の中核的な技術、専門的知識に基づく大くくりな構成とすることを目指して見直しを行った結果、69科目の構成とすることが適当である。
上記のほか、「今後の技術士制度の在り方について」では、技術士資格の更新制度の導入や他の国家資格との相互活用などについての改善方策もまとめられています。
「今後の技術士制度の在り方について」は、以下のURLを参照ください。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu7/sonota/1381612.htm
第一試験の専門科目の大くくり化は、「更に検討を進める」とあるように、その決定・実施はまだしばらく先になりそうです。
第二次試験(総合技術監理部門を除く技術部門)の内容の変更は、特に大きな点では、以下の2点が挙げられます。
①択一式を記述式に変更
②選択科目の統合(全96科目→69科目)
第二次試験の変更の実施は、平成31年度(2019年度)以降になることが決定しております。
全てが記述式問題になること、また、選択科目の統合による問題内容の見直しから、変更後の技術士筆記試験は、出題予想や対応が困難になることは明白です。
従来試験の最後の年度になるであろう、平成30年度(2018年度)の技術士試験がチャンスです。
過去3年間の合格率を下表に示します。全体の合格率が14〜15%と、大変厳しい合格率であることを認識ください。
試験に合格するにはまず、いままでの試験内容の出題傾向を把握し、試験問題が要求する内容をよく理解したうえで、自分が合格ラインをクリアするにはどのような勉強が必要かをよく認識し、ブレのない学習を継続して行い、自身の実力を着実にアップしていくのが、対策の基本です。
また、単に受験勉強という狭い枠だけにとらわれず、普段の業務を行っているときや、毎日のニュースを聞いたりしているときに「自分が技術士であるならどう対応するだろう?」と、一段高い視点から多面的に物事を見ようとすることも、「応用能力」や「課題解決能力」を身につけるために大事なことです。
さらに、「今後の技術士試験に要求されるもの」として、表紙にある、技術士に求められるコンピテンシーの7つのキーワードや、「専門知識」「応用能力」「問題解決能力・課題遂行能力」の内容を理解しておくことも重要です。
これらをヒントに、産業界の要請に応えられ、国際的に活躍できるエンジニアを目指し、これからの学習を継続して行ってください。
平成30年度技術士試験をラストチャンスと考え、本誌を参考に試験突破のためのポイントを見つけて、技術者の最高資格をゲットしてください。
平成26〜28年度 技術士第二次試験部門別結果
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26年度 |
27年度 |
28年度 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
機械 |
984 | 221 | 22.5% | 1,050 | 217 | 20.7% | 1,046 | 226 | 21.6% |
船舶・海洋 |
6 | 1 | 16.7% | 11 | 2 | 18.2% | 11 | 5 | 45.5% |
航空・宇宙 |
36 | 6 | 16.7% | 38 | 9 | 23.7% | 49 | 12 | 24.5% |
電気電子 |
1,287 | 203 | 15.8% | 1,345 | 213 | 15.8% | 1,439 | 206 | 14.3% |
化学 |
132 | 32 | 24.2% | 140 | 39 | 27.9% | 130 | 32 | 24.6% |
繊維 |
29 | 13 | 44.8% | 37 | 10 | 27.0% | 47 | 15 | 31.9% |
金属 |
121 | 32 | 26.4% | 103 | 47 | 45.6% | 104 | 36 | 34.6% |
資源工学 |
21 | 10 | 47.6% | 21 | 6 | 28.6% | 15 | 4 | 26.7% |
建設 |
12,553 | 1,580 | 12.6% | 13,635 | 1,623 | 11.9% | 13,648 | 1,786 | 13.1% |
上下水道 |
1,383 | 215 | 15.5% | 1,427 | 189 | 13.2% | 1,500 | 193 | 12.9% |
衛生工学 |
575 | 61 | 10.6% | 611 | 73 | 11.9% | 642 | 66 | 10.3% |
農業 |
665 | 138 | 20.8% | 769 | 113 | 14.7% | 817 | 125 | 15.3% |
森林 |
276 | 62 | 22.5% | 333 | 77 | 23.1% | 341 | 106 | 31.1% |
水産 |
113 | 20 | 17.7% | 134 | 24 | 17.9% | 142 | 24 | 16.9% |
経営工学 |
196 | 52 | 26.5% | 201 | 52 | 25.9% | 181 | 56 | 30.9% |
情報工学 |
442 | 85 | 19.2% | 449 | 79 | 17.6% | 517 | 64 | 12.4% |
応用理学 |
545 | 77 | 14.1% | 587 | 87 | 14.8% | 556 | 74 | 13.3% |
生物工学 |
40 | 15 | 37.5% | 30 | 12 | 40.0% | 50 | 24 | 48.0% |
環境 |
518 | 96 | 18.5% | 587 | 94 | 16.0% | 551 | 92 | 16.7% |
原子力・放射線 |
79 | 17 | 21.5% | 77 | 19 | 24.7% | 99 | 29 | 29.3% |
(20部門合計) |
20,001 | 2,936 | 14.7% | 21,585 | 2,985 | 13.8% | 21,885 | 3,175 | 14.5% |
総合技術監理 |
3,206 | 562 | 17.5% | 3,293 | 664 | 20.2% | 3,147 | 473 | 15.0% |
全21部門合計 |
23,207 | 3,498 | 15.1% | 24,878 | 3,649 | 14.7% | 25,032 | 3,648 | 14.6% |
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