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2015.11【特集記事】
エンジニアの最高国家資格 技術士合格への道
第1章 2016年度技術士試験の内容は? 〜現在の技術士試験の概要と対応〜
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1−1.技術士制度のあらまし
技術士は、およそ半世紀前に、米国のコンサルティングエンジニアおよびプロフェッショナルエンジニアの制度を倣って、コンサルティングエンジニアの制度を定着させるために生まれたものです。
当初民間資格としてスタートし、技術士法の制定をめざした積極的な活動が行われ、紆余曲折を経て1957年、国会の審議を通過し、科学技術庁を所管とする技術士制度が発足したわけです。
1958年7月、第1回目の技術士試験が行われ、同年11月、技術士法に基づく(社)日本技術士会が発足しました。
1983年には技術士補制度が発足し、技術士となるのに必要な技能を修習するため、技術士補として技術士業務を補助することになりました。
1998年に、APECエンジニアの枠組み作りがスタートし、2000年にAPECエンジニア登録が開始されました。この動きに伴い、2000年4月、技術士法が改正され、技術士第二次試験は技術士第一次試験の合格者(及びそれと同等と認められる者)のみが受験できるようになりました。技術士第一次試験は技術士第二次試験のパスポートというわけです。そして、2007年から第二次試験の試験方法が変わり、さらに2013年度に再度、技術士試験の見直しが行われました。
2016年度試験は、この改正の4年目となります。
1−2.技術士第一次試験実施概要
「平成27年度技術士第一次試験実施大綱」(平成27年2月2日発表)では以下のように定められました。
1)技術士第一次試験の実施について
(1) 技術士第一次試験は、機械部門から原子力・放射線部門まで20の技術部門ごとに実施し、技術士となるのに必要な科学技術全般にわたる基礎的学識及び技術士法第四章の規定の遵守に関する適性並びに技術士補となるのに必要な技術部門についての専門的学識を有するか否かを判定し得るよう実施する。
(2) 試験は、基礎科目、適性科目及び専門科目の3科目について行う。
出題に当たって、基礎科目については科学技術全般にわたる基礎知識(設計・計画に関するもの、情報・論理に関するもの、解析に関するもの、材料・化学・バイオに関するもの、環境・エネルギー・技術に関するもの)について、適性科目については技術士法第四章(技術士等の義務)の規定の遵守に関する適性について、専門科目については技術士補として必要な当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識について問うよう配慮する。
基礎科目及び専門科目の試験の程度は、4年制大学の自然科学系学部の専門教育程度とする。
(3) 基礎科目、適性科目及び専門科目を通して、問題作成、採点、合否判定等に関する基本的な方針や考え方を統一するよう配慮する。
なお、専門科目の問題作成に当たっては、教育課程におけるカリキュラムの推移に配慮するものとする。
2)技術士第一次試験の試験方法
(1) 試験の方法
- 試験は筆記により行い、全科目択一式とする。
- 試験の問題の種類及び解答時間は、次の通りとする。((2)の配点含む)
問題の種類 |
解答時間 |
配 点 |
I 基礎科目 科学技術全般にわたる基礎知識を問う問題 |
1時間 |
15点満点 |
II 適性科目 技術士法第四章の規定の遵守に関する適性を問う問題 |
1時間 |
15点満点 |
III 専門科目 当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識を問う問題 |
2時間 |
50点満点 |
- 受験者が解答するに当たっては、電子式卓上計算機(四則演算、平方根、百分率及び数値メモリのみ
有するものに限る。)等の使用は認めることができるが、ノート、書籍類等の使用は禁止する。
1−3.技術士第二次試験実施概要
「平成27年度技術士第二次試験実施大綱」(平成27年2月2日発表)では以下のように定められました。
1)技術士第二次試験の実施について
(1) 技術士第二次試験は、機械部門から総合技術監理部門まで21の技術部門ごとに実施し、当該技術部門の技術士となるのに必要な専門的学識及び高等の専門的応用能力を有するか否かを判定し得るよう実施する。
(2) 試験は、必須科目及び選択科目の2科目について行う。
出題に当たって、総合技術監理部門を除く技術部門における必須科目については当該技術部門の技術士として必要な当該「技術部門」全般にわたる専門知識について、選択科目については当該「選択科目」に関する専門知識及び応用能力並びに課題解決能力について問うよう配慮する。
総合技術監理部門における必須科目については、「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力を問うこととし、選択科目については、総合技術監理部門を除く技術部門の必須科目及び選択科目と同様の問題の種類を問うこととする。
試験の程度は、科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計等の業務に従事した期間が4年等であることを踏まえたものとする。
(3) 筆記試験(必須科目、選択科目)及び口頭試験を通して、問題作成、採点、合否判定等に関する基本的な方針や考え方を統一するよう配慮する。
2)技術士第二次試験の試験方法
(1) 筆記試験
- 総合技術監理部門を除く技術部門の必須科目は択一式により、選択科目は記述式により行う。
総合技術監理部門の必須科目及び選択科目は、いずれも択一式及び記述式により行う。
- 筆記試験の問題の種類及び解答時間は、次のとおりとする。((3)の配点含む)
(総合技術監理部門を除く技術部門)
※必須科目(択一式)の成績が合否決定基準に満たない者については、選択科目(記述式)の採点を行わない。
(総合技術監理部門を除く技術部門)
問題の種類 |
解答時間 |
配 点 |
I 必須科目 「技術部門」全体にわたる専門知識 |
1時間30分 |
30点満点 |
II 選択科目 「選択科目」に関する専門知識及び応用能力 |
2時間 |
80点満点 (各40分) |
III 選択科目 「選択科目」に関する課題解決能力 |
2時間 |
(総合技術監理部門)
問題の種類 |
解答時間 |
配 点 |
I 必須科目 「総合技術監理技術部門」に関する 課題解決能力及び応用能力 |
択一式 |
2時間 |
50点満点 |
記述式 |
3時間30分 |
50点満点 |
II 選択科目
(他の20の技術部門の必須科目及び
対応する選択科目のうちあらかじめ
選択する1科目 |
1 選択した「技術部門」全般にわたる専門知識 |
1時間30分 |
30点満点 |
2 選択した技術部門に対応する「選択科目」 に関する専門知識及び応用能力 |
2時間 |
80点満点 (各40分) |
3 選択した技術部門に対応する「選択科目」 に関する課題解決能力 |
2時間 |
※既に総合技術監理部門以外のいずれかの技術部門について技術士となる資格を有する者は、当該技術部門に対応する選択科目が免除される。(技術士法施行規則 第11条の2)
- 受験者が解答するに当たっては、電子式卓上計算機(四則演算、平方根、百分率及び数値メモリのみ有するものに限る。)等の使用は認めることができるが、ノート、書籍類等の使用は禁止する。
(2) 口頭試験
- 口頭試験は、筆記試験の合格者に対してのみ行う。
- 口頭試験は、技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における答案(総合技術監理部門を除く技術部門については、課題解決能力を問うもの)及び業務経歴を踏まえ実施するものとし、筆記試験の繰り返しにならないように留意する。
- 試問事項及び試問時間は、次のとおりとする((3)の配点含む)。なお、試問時間を10分程度延長することを可能とするなど受験者の能力を十分確認できるよう留意する。
(総合技術監理部門を除く技術部門)
試問事項 |
試問時間 |
配 点 |
I 受験者の技術的体験を中心とする経歴の内容及び 応用能力(1.経歴及び応用能力) |
20分 |
60点満点 |
II 技術士としての適格性及び一般的知識 (2.技術者倫理 3.技術士制度の認識その他) |
各20点満点 |
(総合技術監理部門)
諮問事項 |
諮問時間 |
配 点 |
I (必須科目に対応) |
1 「総合技術管理部門」の必須科目に 関する技術士として必要な専門知識 及び応用能力 |
1.体系的専門知識 |
20分 |
40点満点 |
2.経歴及び応用能力 |
60点満点 |
II (選択科目に対応) |
1 受験者の技術的体験を中心とする経歴の内容及び応用能力 (1.経歴及び応用能力) |
※ 20分 |
60点満点 |
2 技術士としての適格性及び一般的知識 (2.技術者倫理 3.技術者制度の認識その他) |
各20点満点 |
※選択科目に関する口頭試験は、総合技術監理部門以外の技術部門の口頭試験にて別途行うこととする。また、選択科目が免除される者 は必須科目のみの試問とする。
1−4.過去3年間の第二次試験結果と2016年度試験への対応
過去3年間の第二次試験結果を下表に示します。全体的には15%前後の合格率となっております。平成25年度の合格率は、新制度1年目の試験であったためか、若干高めの結果となりました。改正2年目の26年度試験の合格率は、25年度に比べ若干下がっております。特に注意していただきたいのは、26年度では総合技術監理部門の合格率が前年度より4.4%高くなったのに比較して、他の20部門の合計合格率は前年度よりも2.3%のマイナスとなっており、試験制度変更前の24年度よりも0.1%低いものとなっております。
なお、平成27年度の試験から「必須科目(択一式)の成績が合否決定基準に満たない者については、選択科目(記述式)の採点を行わない。」こととなりました。27年度試験の結果は、本誌編集時点(27年9月末)ではわかりませんが、必須科目不合格者には選択科目の評価結果が伝えられなくなることから、今後の試験対応がより難しくなるかと思われます。
以下、平成28年度に向けての技術士第一次試験・第二次試験の攻略のヒントをお伝えします。
【技術士第一次試験について】
平成24年度の合格率:63.3%、25年度:37.1%、26年度:61.2%と、合格率が上下している傾向にあるが、今後も同様の範囲内で移行すると予想される。
25年度試験から合格基準が各科目50%以上と、基礎科目・専門科目が従来よりも厳しくなったこと、また、適性科目の難易度が高くなっている傾向にあることから、各科目とも十分学習しておく必要がある。
過去数年分の過年度問題を十分学習し、基礎知識の習得に努めることと、さらなるレベルアップのため、関連した模擬問題を数多くこなして応用能力を身につけることが大切である。
【技術士第二次試験について】
- 受験申込書:24年度試験までの技術的体験論文が廃止された代わりに、受験申込書の業務経歴票に、技術的体験をより詳細に記載する「業務内容の詳細」が追加された。業務経歴(および筆記試験の答案)を踏まえ口頭試験が実施されることが大綱でも明示されており、実際に25〜26年度の口頭試験ではこの「業務内容の詳細」についての質問が中心となっている。業務経歴、特に「業務内容の詳細」は、技術的体験について試験官にアピールできるような表現で作成する必要がある。今のうちから自分の業務経歴を整理しておき、「技術士にふさわしい」技術的体験の骨子を作成しておく。このことは、受験部門や選択科目、さらには「専門とする事項」の選定にも大きく関連するので、特に初めて第二次試験を受験する方は早目に準備しておくことが重要である。
- 必須科目:従来の記述式問題から択一式問題(I)になったため、あやふやな知識では高得点を得ることは困難になる。出題範囲や出題内容については、25〜27年度試験問題および過去に出題されていた平成13〜18年度までの技術士第二次試験の択一式問題が参考になる。これらの過去問題をよく学習しておくほか、25〜27年度問題を分析して、18年度以前の過去問題と同じ出題がされている内容、新しく出題されている内容を理解し28年度の出題を予測する。25年度試験では過去問題と同じ出題が多く、比較的高得点を取りやすかったが、26〜27年度試験では過去問題とまったく同じ出題は少なくなり、難易度が高くなっている。前述のように、27年度試験から、この択一式の成績が合否決定基準に満たないと記述式の採点が行われなくなったので、必ず合格ラインをクリアできるよう十分学習しておく。
- 選択科目:従来の「選択科目に関する専門知識及び応用能力」についての問題(II)は、「専門知識」を問う問題と、「応用能力」を問う問題の2種類に分けて出題された。25〜27年度問題を参考にその出題形式を認識し、過年度問題の出題傾向や最近のキーワードに留意し、出題されやすいと思われる項目をピックアップして整理しておく。25年度から新設の「選択科目に関する課題解決能力」についての問題(III)は、選択科目の分野全体に関わる、普遍的な課題と最近の重要な技術動向の両方についての出題が考えられる。また、従来の必須科目が「技術部門全般にわたる論理的考察力と課題解決能力」についての問題であったことから、問いかけの形式や答案の構成の仕方などを、過去の必須科目の問題や解答例を利用して学習することも役立つ。なお、IIIの問題では、解決策等に伴うリスクについても問われることが多いので、リスクアセスメント等に対する知識を理解・整理しておくことが必要である。
試験改正4年目となる平成28年度の試験では、25〜27年度の出題内容を把握することでその傾向をつかむことができ、対応しやすくなったといえます。しかし、試験の内容が簡単になったわけではありません。逆に、今まで新試験ということで甘目に評価していた試験官も、だんだん厳しい目で見るようになり、「技術士にふさわしい」答案でないと容赦なく切り捨てるような傾向にあります。
試験問題が要求する内容をよく理解したうえで、自分が合格ラインをクリアするにはどのような勉強が必要かをよく認識したうえでブレのない学習を継続して行い、自身の実力を着実にアップしていくのが、対策の基本です。
また、単に受験勉強という狭い枠だけにとらわれず、普段の業務を行っているときや、毎日のニュースを聞いたりしているときに「自分が技術士であるならどう対応するだろう?」と、一段高い視点から物事を見ようとすることも、「応用能力」や「課題解決能力」を身につけるために大事なことです。
表紙にある、技術士に求められるコンピテンシーの7つのキーワードをヒントに、産業界の要請に応えられ、国際的に通用するエンジニアを目指し、これからの学習を継続して行ってください。
本誌を参考に、平成28年度技術士試験合格のためのポイントを見つけて、技術者の最高資格をゲットしてください。
平成24〜26年度 技術士第二次試験部門別結果
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24年度 |
25年度 |
26年度 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
機械 |
898 | 210 | 23.4% | 916 | 209 | 22.8% | 984 | 221 | 22.5% |
船舶・海洋 |
10 | 2 | 20.0% | 9 | 4 | 44.4% | 6 | 1 | 16.7% |
航空・宇宙 |
24 | 5 | 20.8% | 27 | 7 | 25.9% | 36 | 6 | 16.7% |
電気電子 |
1,260 | 193 | 15.3% | 1,362 | 263 | 19.3% | 1,287 | 203 | 15.8% |
化学 |
118 | 29 | 24.6% | 116 | 29 | 25.0% | 132 | 32 | 24.2% |
繊維 |
33 | 6 | 18.2% | 40 | 10 | 25.0% | 29 | 13 | 44.8% |
金属 |
114 | 25 | 21.9% | 109 | 30 | 27.5% | 121 | 32 | 26.4% |
資源工学 |
23 | 6 | 26.1% | 24 | 7 | 29.2% | 21 | 10 | 47.6% |
建設 |
13,432 | 1,748 | 13.0% | 12,218 | 1,834 | 15.0% | 12,553 | 1,580 | 12.6% |
上下水道 |
1,526 | 246 | 16.1% | 1,479 | 268 | 18.1% | 1,383 | 215 | 15.5% |
衛生工学 |
580 | 92 | 15.9% | 611 | 98 | 16.0% | 575 | 61 | 10.6% |
農業 |
719 | 164 | 22.8% | 655 | 131 | 20.0% | 665 | 138 | 20.8% |
森林 |
261 | 53 | 20.3% | 247 | 52 | 21.1% | 276 | 62 | 22.5% |
水産 |
134 | 29 | 21.6% | 120 | 26 | 21.7% | 113 | 20 | 17.7% |
経営工学 |
150 | 37 | 24.7% | 160 | 39 | 24.4% | 196 | 52 | 26.5% |
情報工学 |
509 | 69 | 13.6% | 470 | 118 | 25.1% | 442 | 85 | 19.2% |
応用理学 |
637 | 104 | 16.3% | 602 | 117 | 19.4% | 545 | 77 | 14.1% |
生物工学 |
50 | 19 | 38.0% | 43 | 16 | 37.2% | 40 | 15 | 37.5% |
環境 |
599 | 88 | 14.7% | 521 | 91 | 17.5% | 518 | 96 | 18.5% |
原子力・放射線 |
117 | 19 | 16.2% | 101 | 21 | 20.8% | 79 | 17 | 21.5% |
(20部門合計) |
21,194 | 3,144 | 14.8% | 19,830 | 3,370 | 17.0% | 20,001 | 2,936 | 14.7% |
総合技術監理 |
3,654 | 265 | 7.3% | 3,293 | 431 | 13.1% | 3,206 | 562 | 17.5% |
全21部門合計 |
24,848 | 3,409 | 13.7% | 23,123 | 3,801 | 16.4% | 23,207 | 3,498 | 15.1% |
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