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技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)
〜これがないと国際的にはエンジニアと認められない〜

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技術の高度化、統合化等に伴い、技術者に求められる資質能力はますます高度化、多様化しています。
これらの者が業務を履行するために、技術ごとの専門的な業務の性格・内容、業務上の立場は様々であるものの、(遅くとも)35歳程度の技術者が、技術士資格の取得を通じて、実務経験に基づく専門的学識及び高等の専門的応用能力を有し、かつ、豊かな創造性を持って複合的な問題を明確にして解決できる技術者(技術士)として活躍することが期待されています。
このたび、技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)について、国際エンジニアリング連合(IEA)の「専門職としての知識・能力」(プロフェッショナル・コンピテンシー、PC)を踏まえながら、以下の通り、キーワードを挙げて示します。これらは、別の表現で言えば、技術士であれば最低限備えるべき資質能力です。
技術士はこれらの資質能力をもとに、今後、業務履行上必要な知見を深め、技術を習得し資質向上を図るように、十分な継続研さん(CPD)を行うことが求められています。これらの同等性認承はワシントン協定によって世界的規模に拡がっています。(技術士分科会資料)

専門的学識

  • 技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
  • 技術士の業務に必要な、我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。

問題解決

  • 業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
  • 複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。

マネジメント

  • 業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。

評価

  • 業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。

コミュニケーション

  • 業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
  • 海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。

リーダーシップ

  • 業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
  • 海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。

技術者倫理

  • 業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
  • 業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
  • 業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。

ワシントン協定とは

ワシントン協定(Washington Accord)は、技術者教育の実質的同等性を相互承認するための国際協定です。この協定の目的は、各加盟団体が行う技術者教育認定制度の認定基準・審査の手順と方法の実質的同等性を相互に認め合うことにより、他の加盟団体が認定した技術者教育プログラムの実質的同等性、ひいてはその修了者について自国・地域の認定機関が認定したプログラム修了者と同様に専門レベルで技術業を行うための教育要件を満たしていることを相互に認め合うことです。1989年11月に最初の6カ国・地域を代表する技術者教育認定団体が協定を結び、2005年6月に日本を代表する認定団体としてJABEEの正式加盟が認められました。2012年に新たに加盟の認められたロシアを含め、現在の加盟団体は以下15団体と、暫定加盟の5団体(ドイツ、インド、スリランカ、パキスタン、バングラディッシュ)です。アングロ・アメリカン諸国から始まったワシントン協定は、非英語圏を含む世界の技術者教育認定団体の相互協定へと変遷・拡大しています。
  • 米国:Accreditation Board for Engineering and Technology (ABET)
  • カナダ:Engineers Canada
  • 英国:Engineering Council UK (ECUK)
  • オーストラリア:Engineers Australia (EA)
  • アイルランド:Engineers Ireland (EngIRE)
  • ニュージーランド:The Institution of Professional Engineers New Zealand (IPENZ)
    (以上1989年加盟)
  • 香港:The Hong Kong Institution of Engineers (HKIE)(1995年加盟)
  • 南アフリカ:The Engineering Council of South Africa (ECSA)(1999年加盟)
  • 日本:日本技術者教育認定機構 (JABEE)(2005年加盟)
  • シンガポール:Institution of Engineers Singapore (IES)(2006年加盟)
  • 韓国:Accreditation Board for Engineering Education of Korea (ABEEK)(2007年加盟)
  • 台湾:Institute of Engineering Education Taiwan (IEET)(2007年加盟)
  • マレーシア:Board of Engineers Malaysia (BEM)(2009年加盟)
  • トルコ:MUDEK(2011年加盟)
  • ロシア:Association for Engineering Education of Russia (AEER)(2012年加盟)

IEAとは

International Engineering Alliance(IEA)とは、JABEEが加盟するワシントン協定を含むエンジニアリング教育認定に関する3協定、専門職資格認定の3枠組によって構成され、高等教育機関における教育の質保証・国際的同等性の確保と、専門職資格の質の確保・国際流動化は同一線上のテーマであるという観点のもと運営される国際エンジニアリング連合です。 エンジニアリング教育認定の3協定(ワシントン協定、シドニー協定、ダブリン協定)はそれぞれ修了時に求められる知識・能力の達成の設定が異なりますが、到達すべき事項として設置されている項目自体は共通の概念を適用しています。


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