| |
|
著者:
秋葉 恵一郎(技術士 化学部門:修習技術者支援実行委員会顧問)
小林 進(技術士 情報工学/総合技術監理部門:前修習技術者支援実行委員会委員長)
A5判・150頁 定価 2,800円(税込)+発送料
|
このボタンをクリックすると『技術士を目指せ!!修習技術者のための道しるべ』が買い物カゴに入ります。
|
はじめに
日本経済は1987年からしばらくの間,年平均5%を上まわる高い経済成長を続け,1990年を少し超えたところで頂点まで登りつめた。しかしながら,その後バブル崩壊により企業収益の急速な悪化,在庫調整の長期化,金融システムの崩壊を経験し,塗炭の苦しみの“失われた10年”を経験した。また,現在世界はリーマンショックの影響で,金融業のみならずサービス業や製造業でも,産業革命以後の経済成長が限界に達したかのような未曽有の「世界同時不況」の真只中にある。そして追い打ちをかけるかのように,平成23年3月11日「東日本大震災」が起こった。人口減少,老齢人口増加,借金大国“日本”等の課題を多く抱える日本に対して,神が「日本よ!変わりなさい,そして世界のために汗をかきなさい」と言っているように筆者らには感じられた。
それはさておき,我国は失われた10年の経験を活かしつつ,今後は新しいビジネスモデルを目指して産業の再生を図って行かねば,これまでの豊かな生活は維持できない。もはや真似るべき産業モデルが世界の中にない中で,我国企業は電気・電子ハイテク,バイオ,情報技術,そしてナノテクノロジー分野等で先進国企業とグローバルな競争を展開し,またBRICS諸国の追い上げをしのぎながら,新産業や新技術の創出が求められている。
天然資源に恵まれない日本経済の成長原動力は,何といっても科学技術であり,そしてそれを担うのは人財である。技術士を目指す方々は,産業再生並びに新産業創出の最前線で日夜R&D(Research and Development)に携わっていくことになるでしょう。
政府の総合科学技術会議は,経済波及効果が高い分野に重点投資する戦略をまとめ上げた。また最近では民主党政権がデフレからの脱却を急ぎつつ,環境,エネルギー,健康分野等に投資する国家プロジェクトを「強い経済」と銘打って策定した。しかしながら,現実を見据えると世界をリードする科学技術,新産業の創出は並大抵ではない。
足元の数字を見てみるとそれがよく分かる。まず,日本の人口が問題を含んでいる。国立社会保障・人口問題研究所の試算によると,2008年以降平均すると毎年80万人ほど減っていく。すなわち,政令指定都市が毎年1つずつ減っていく勘定だ。1900年〜2000年の100年間には8000万人,平均すると毎年80万人ほど人口が増加した。戦時中を除けば,人口増に後押しされて日本の華々しい経済成長が実現されたことになる。しかしながら,これからは山を下るような人口の減少がある。余程の新産業の創出や技術革新がなければ日本の国内総生産(GDP)の成長は期待できない。
また日本のGDPの世界経済に占める割合は,2006年で“9.1%”となり10%(2005年:10.3%,1994年:18.0%(ピーク))の大台を割った。10年ほど前の約半分になった勘定だ。1990年過ぎまでは経済成長が続いたが,その後の個人消費が飽和したためか,好不況の分かれ目となる2%の成長もおぼつかない。そして,2006年国民一人当たりのGDPの順位は,OECD(経済協力開発機構)メンバー30カ国中で,為替レートにもよるが,第18位(1993年は世界第2位)まで下ってしまった。
次に日本の国際競争力を見てみよう。経済規模と経済成長の成り行きから当然かも知れないが,OECDの科学技術白書によれば,2006年の研究開発費総額で日本は中国に抜かれた。今後この差はどんどん開くだろう。IMD(スイスの経営開発国際研究所)の「世界競争力年鑑2007年」,WEF(世界経済フォーラム)の「世界競争力報告2007―2008」によると,“日本の世界における2008年の競争力ランキング”は,前者では55ヵ国中22位(1993年は第2位),後者では131ヵ国中で8位にランクされている。
最後に技術士に関係する“科学技術力”を見てみると,前述のIMDランキングの「科学的インフラ」の部では2008年で第2位,WEFランキングの「イノベーション」の部では2007年で第4位にランクされている。また「日本国籍出願人による日本特許出願件数」は他の主要国出願人を寄せ付けずに第1位を保っている。
以上の数字を俯瞰すると米国型市場経済万能のモデルから新たな経済モデルに変化する兆候が垣間見える。これからの世界の中で,日本をどう支えて行くか,どう国際競争力をつけて行くか,これが技術士(プロフェッショナル・エンジニア)とそれを目指す修習技術者の長期目標になるものと思う。青色発光ダイオードの高輝度化により道路標識の青信号が“あっという間”に置き替わったように,技術革新は一瞬にして産業の構成パーツを変えてしまう。このあたりのキャスティングボードを優れた技術者(士)が握っているといっても過言ではない。
優れた技術者(士)は以下の資質や能力を備えることが要求されている1)。
- 高い職業倫理
- 柔軟で創造性に富む思考力
- 生涯にわたって新しい知識を獲得し,それを統合していく能力
- 自らの専門領域に関する知識と応用力
- 技術分野全般を見渡す広い視野や幅広い知識
- 的確な問題設定能力・洞察力を持ち,必要とする技術を組合わせ統合て問題を解決する能力
- 経営・管理能力や説明力,コミュニケーション能力等を有し,国際的に通用すること
これらを初めから持ち合わせることは容易ではない。しかし,筆者らのこれまでの経験,学習,仕事の中身等をお伝えすることによって,修習技術者の皆様,JABEE修了者の皆様,華々しい活躍の緒についた女性技術士を志望される皆様がめでたく“技術士”に合格でき,“優れた技術士”になるための「道しるべ」を提供することができるのではないかと思い,ここに本書を発行する事にした次第である。既刊の「修習技術者のための修習ガイドブック―第2版―(公社)日本技術士会編」の副読本としての役割が果たせれば幸甚に思う。
【参考文献】
1)科学技術・学術審議会技術士分科会一般部会報告(平成14年2月25日)
目次
- 【はじめに】
- I.序章
- 1.修習技術者と技術士制度
- (1)修習技術者
- (2)技術士制度
- (3)技術士第二次試験
- (4)技術士業務の今後
- II.修習技術者が身に付けて欲しい力
- 1.基礎となる教養力
- 2.専門技術的能力
- (1)研究開発推進力
- (2)研究開発先見力
- (3)研究開発独創力(創造性の開発)
- (4)研究開発企画力
- (5)セレンディピティ(偶然をきっかけとする成功)
- 3.業務遂行能力
- (1)課題の設定とその解決力
- (2)コミュニケーション力
- (3)プレゼンテーション力
- (4)文章力
- (5)判断力
- (6)調査力
- (7)IT力
- (8)チームワーク力
- (9)リーダーシップ
- 4.行動原則
- (1)コンプライアンス(法令順守)
- (2)CSR(企業の社会的責任)
- (3)技術者倫理
- 5.重要な視点
- (1)地球温暖化防止(低炭素化社会)
- (2)循環型社会対応
- (3)知的財産権
- (4)世界標準(グローバル・スタンダード)
- (5)安全安心技術
- III.技術士第二次試験対策
- (1)技術士第二次試験で問われる内容
- (2)技術士第二次試験に向けた対策
- (3)キャリア形成
- 【おわりに】
- 【あとがき】
|